【記事】AI、工場無人化…職人技も置き換え、リアル社員の能力とは

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オフィスの一角にある無人のデスクで、パソコンが数字を自動入力する。画面の隅には「お仕事中」の札。島津製作所の子会社、島津エイテック(京都市中京区)で部品発注業務を担う「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」だ。ミスもなく黙々と働く“同僚”を、職場では「もう1人の社員」と敬意を込めて「プラスワン」と呼ぶ。

RPAは、データ入力などの定型的な作業を自動化するソフト。島津製はグループで73の業務にRPAを導入し、社員の労働時間を年間延べ7千時間削減できると見込む。

「負担がものすごく減った」とエイテック第一製造部の木田小寿栄課長は目を見張る。生産計画の見直しが月1回から2回に増え、需要変動も増えたが、従来のような残業対応はなくなった。木田課長は「RPAが生み出してくれた時間は、付加価値の高い業務に充てる」と力を込める。

生産年齢人口が縮み、人手不足が深刻化する日本の労働市場。働き方改革と生産性向上の両立に経営者が頭を悩ませる中、人が担う業務を機械やITで代替する企業が次々と出てきている。

京都銀行は、コールセンターに寄せられた内容を書き起こす業務や稟議書(りんぎしょ)作成を補助するため、人工知能(AI)を導入した。AIが言語の関連性や膨大なデータを読み解き、行員の負担を減らす。

「大量のデータからもっともらしい結果を類推する力には、人は到底及ばない」。AIの働きを見守る融資戦略室の萩尾良一室長は確信する。だが、企業や人を見極める力はまだまだという。「財務データに表れない事業の将来性や社長の人柄をどう判断するか。信用を創造し、課題を解決する力の差が銀行間でいよいよ際立ってくるはずだ」と気を引き締める。

ものづくりを支えてきた「匠(たくみ)の技」も置き換えの対象だ。試作品を中心に金属切削加工を手掛けるヒルトップ(宇治市)は、工作機械に取り付ける数百種の工具や削り方ごとに削れる金属の量を数値化し、熟練工員が抱えるノウハウなどをデータベースとしてまとめた。

複雑な加工の再現にも成功し、工場をほぼ無人化。24時間稼働で効率化した。山本勇輝経営戦略部長は「職人の感覚はデータを取ることにより機械で再現できる」と断言する。

工作マシンに加工方法を指示するプログラムの作成も効率化し、経験が浅い若手でも扱えるようにした。AI搭載のソフトも開発中で、さらに自動化を進める計画だ。

数多くの仕事がRPAやAIで補完され、機械で置き換わる時代に、「リアル社員」に求められる能力は何なのか。山本さんは「中核技術である加工データを利用し、次のビジネスを生み出すこと」と考える。「取引先を回ってニーズを掘り起こすような仕事は人にしかできない。クリエーティブな知的労働をしてほしい」


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