【記事】10年後のがん発症確率はどこまで予測できるのか

10年後のがん発症確率はどこまで予測できるのか

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「10年後のがん確率」どうやって算出?

東京海上日動火災保険が、がんなどの10年後の発症確率を予測するサービスを、7月からネット上で始める方針を明らかにしました。

この予測サービスは、年齢、身長、体重、飲酒量、喫煙や運動の有無など、約20項目を入力すれば、がんなどになる確率が算出されるとのこと。予測には、国立がん研究センターの研究成果を活用するということで、同センターも以前から、同様のサービスをHP上で提供しています。

では、「10年後の病気発症確率」がわかる研究とは、どのようなものでしょうか。

実は、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学などが共同で「多目的コホート研究」という大規模な研究を行っています。

「病気発症の予測」どれくらい信頼できる?

がん・心筋梗塞・脳卒中などの発症には、食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣が深く関わっています。そこで、どのような生活習慣が、どんな疾病の発症に関連しているのかを明らかにするために、日本人約10万人の方々を対象に、10年以上の長期にわたって追跡調査しているのが「多目的コホート研究」です。今回の「10年後の発症確率」予測サービスは、その結果という確かな統計結果に基づくものですから、信頼度はかなり高いと考えていいでしょう。

遺伝子検査でわかる将来の病気の可能性

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝子検査を受けたところ、将来、乳がんになる可能性が90%近くと診断され、2013年、両乳房および卵巣と卵管の「予防的乳房切除術」に踏み切りました。遺伝子検査は、特定の染色体や遺伝子について、何らかの変異が起こっていないかを確かめる検査です。

乳がんの5~10%は遺伝性で、非常に遺伝性が高い疾患。この遺伝性乳がんのように、遺伝子検査の検査結果が診断や治療方針に影響を与える疾患もあります。

ネット申し込み「個人向け遺伝子検査」はなぜ安い?

ヒトの遺伝情報は、13年の歳月と30億ドル(約3300億円)以上を費やされ、2003年に全ゲノム解読が完了しました。しかし現在では、DNAの塩基配列を高速で読み取る装置「次世代シークエンサー」の登場で100万分の1にまでコストダウンし、解析時間も短縮しています。

こうしたことを受けて、現在日本では様々な民間企業が遺伝子検査を行うようになりました。ネットなどで数千円~数万円の検査キットを購入し、唾液や口腔内の粘膜を検査会社に送るものが多くなっています。

お手軽「個人向け遺伝子検査」でわかること、わからないこと

アンジェリーナ・ジョリーさんが受けたような、医師による遺伝子検査とは違い、個人向け遺伝子検査では、検査結果が診断や治療方針に影響を与えるような遺伝性疾患を扱うことはできません。高確率で発症しうる疾患の遺伝子検査は対象外。検査キットには「検査の結果得られる判定は、医師の診断ではない」旨を明記しているはずです。

扱えるのは、遺伝要因以外に環境要因が大きく影響する生活習慣病やがんなどの病気や体質(太りやすさ・男性型脱毛など)に限られます。

なぜ業者によって、検査結果に違いが?

今では検査技術が確立されており、個人向けのものでも、遺伝子情報の読み取りに間違いが生じることはほとんどないでしょう。ただし、業者によって結果が違うということはあるようです。その理由の1つは、解析に使用するアルゴリズムが違うからでしょう。

また、ほぼ遺伝子型が解明している検査項目(アルコール代謝や男性型脱毛など)と比べて、まだ確証されていない検査項目(非遺伝性の疾病など)では、各社で数値結果にばらつきが出やすいようです。いずれにしろ「個人向け遺伝子検査」の判定結果は「広範なリスクと傾向」であると考えるほうがいいでしょう。

「遺伝」と「環境」が複雑に絡み合う

多くの疾患は、遺伝的要因と環境的要因が、複雑にからみあって発症します。遺伝子を調べれば全てが分かるという訳ではなく、生活習慣と疾病の関連を研究する「コホート研究」のデータも非常に有用です。現在、この「コホート研究」は世界中で本格化しています。

ビッグデータのAI解析で100%の発症予測も…

そして最も大切なのは、そうした膨大なデータの解析です。

ビッグデータの解析にAIは不可欠であり、AI導入によって解析の精度は格段に上がります。将来的には「コホート研究」で得られたデータベースを基に、より精密な遺伝子検査を行い、AIで結果を解析することで、100%の病気発症の予測さえ可能かもしれません。(とはいえ、まだ知られていない、新たな疾患も次々に登場してくるのですが…)


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