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はじめに
これほどの価値が生み出されているのに、経済的に困窮する人が多いのはなぜか。
技術の進化が加速しているのに、所得がいっこうに増えないのはなぜか。
生産性の伸び
生産性だ。生産性はインプット(投入量)一単位当たりのアウトプット(産出量)のことで、そのうち労働生産性は、労働者一人当たりまたは単位労働時間当たりの産出量として計算する。
長期的な生活水準の向上に唯一貢献するのは、生産性の伸びだと言って差し支えない。
一九九〇年代半ばから始まったこの生産性急伸の原動力は、情報技術(IT)だということである。
伸び悩む所得
労働生産性とは対照的に、世帯所得の中央値は、インフレ調整後の実質ベースで見て一九七〇年代から伸びが鈍化している。
世帯所得の中央値が一〇年ベースで減少したというのは、統計開始後初めての事態だ。インフレ調整後の実質ベースでもこの数字は減っており、こちらも史上初の現象である。
経済学者のエド・エルフによれば、一九八三~二〇〇九年にアメリカで創造された富の一〇〇%以上が世帯の上位二〇%で生じており、残り八〇%の世帯では同時期に富が減っているという。
それも、富の正味増加分の八〇%以上が上位五%の世帯に、四〇%以上が上位一%に集中している。
端的に言って、中間層の労働者はテクノロジーとの競争に負けつつある。
雇用の数すなわち求人数も低迷しているのである。
デジタル技術の高性能化と普及に伴い、GDPの変化と雇用の変化との連動性は弱まっている。
テクノロジーは雇用を破壊する
一部の労働者が機械との競争に敗れ去ったことは、たいていの人が知っている。
労働人口の九〇%が負け組になることだってあり得る。
賃金が最低生存水準を上回っている場合でも、テクノロジー失業は発生する。
テクノロジー失業の恐れは現実に迫っている。
経済学者のロバート・フランクとフィリップ・クックは、音楽のみならずソフトウェア、演劇、スポーツなどさまざまなコンテンツがデジタル形式で配信可能になるとともに、勝者総取りの市場が増えてきたと指摘する。
少し前のアメリカでの話だが、いずれ、日本でも同様のことが想定される。
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