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はじめに
経済の拡大をもたらした相次ぐ技術革新は、機械を敵に回しての競争ではなく、機械を味方につけた競争から生まれた。人間と機械は協力してより多く生産し、より多くの市場を開拓し、より多くのライバルを打ち負かした。
医療、法律、金融、小売り、製造、そして科学的発見においてさえ、競争に勝つカギはマシンを敵に回すことではなく、味方に付けること。
組織革新を質とスピードの両面で推進すること。もう一つは、人的資本を強化し、現在のみならず将来に求められるスキルを習得させることである。
組織改革の強化
「ジョゼフ・シュンペーターはこの過程を「創造的破壊」と名付け、望ましい革新を起こして広めていく主導的役割を果たす人々を起業家と呼んだ」
機械と競争するにはいまが最悪の時期だとすれば、才能ある起業家にとって、いまは最高のタイミングなのである。
それが最も顕著に表れているのが、アメリカのハイテク部門だ。
人的資本への投資
具体的には、教育であり、進化する技術を最大限に活かすためのスキル開発である。
残念ながら、アメリカの教育は停滞している。
それが、いっこうに上昇しない賃金や減少する雇用にはっきりと現れている。
この状況をうんと楽観的に解釈するなら、教育には改善の余地がきわめて大きい、ということになる。
さらに、ITを活用すれば、規模やカスタマイゼーションの柔軟性も飛躍的に高まる。
ロードアイランド・デザイン学校の校長ジョン・マエダは、イノベーション力を高めるためには、これからはSTEM(科学、技術、工学、数学)ではなくSTEAM(+アート)だと言った。
組織改革と人的資本投資の限界
誰もが起業家になれるわけではないし、なるべきでもない。
アメリカの旺盛な起業活動といえども、雇用創出能力には限界がある。
これが最も重要な点だが、人間が機械に対抗するのではなく機械を使って競争するとしても、勝ち組と負け組は出る。
一部の人、それもおそらくはかなりの数の人は、引き続き所得の伸び悩みや減少に直面することになる。
著者からの提言
1.教育に投資する。
2.教師が成果に対して説明責任を持つようにする。
3.学生の教育指導と試験・資格認定を切り離す。
4.義務教育の授業時間数を増やす。
5.スキルを持つ労働者の移民を積極的に受け入れ、アメリカの労働人口に占める高技能労働者の比率を高める。
6.ビジネススクールだけでなくすべての高等教育機関で、起業家教育を行う。
7.カナダなどに倣って「起業家ビザ」という新たなカテゴリーを設け、起業家精神の発揚に努める。
8.新事業の設立を円滑化にするために、情報交換の場やデータベースを創設するほか、雛形(テンプレート)の普及に努める。
9.起業に対する行政面の障壁を極力排除する。
10.通信・輸送インフラの強化に投資する。
11.基礎研究や政府の重要な研究機関(全米科学財団、国立衛生研究所、国防総省国防高等研究事業局)への予算を増やすとともに、無形資産や組織革新を新たな研究対象に設定する。
12.アメリカの労働市場は比較的流動性が高い。雇用・解雇の規制圧力に抵抗し、できるだけこの流動性を維持する。
13.技術の導入より人間の雇用の方が相対的に魅力的になるような状況を作り出す。
14.福利厚生と雇用を切り離し、労働市場の流動性とダイナミズムを高める。
15.新しいネットワーク・ビジネスの規制は急ぐべきではない。
16.住宅ローンへの巨額の補助金は打ち切るか、大幅に削減すべきである。
17.金融サービス部門に対して陰に陽に供給されている補助金を削減する。
18.特許制度を改革する。
19.著作権の保護期間は延ばすべきではない。
いま私たちがしたいのは、議論を巻き起こすことだ。
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